呼吸が大切、重要だという本や話は聞いたことや、情報としてみたことがあるという方も多いのではないでしょうか?
ここ最近、世間で「呼吸」に対する関心が高まっている一方で誤った情報が出回ってしまったり、なんとなくの理解度で適当に深呼吸を繰り返してしまっている方が非常に多いのも痛感しています。
結論、呼吸は肉体的、精神的に劇的に身体を変える力を持っています。
『呼吸が大切なのは知っている』
『でも何がどう大切なのか分からない
ゆえにエクササイズも何をしたら良いか分からない』
ここでは、なぜ呼吸が大事なのか、そして呼吸でどんなことができるのかを理論的にご紹介していきます。
なぜ呼吸が大事?
私たち人間が生きるうえで必要な要素のほぼ全て脳によって制御(支配)されています。
筋肉や動作はもちろん、臓器や五感、思考、感情、記憶、血液循環、そして「姿勢」までも脳によって制御されています。
そして脳が機能するために必要な栄養は主に3つに分類することができ、1つ目が「ブドウ糖」、2つ目が「感覚的栄養」、簡単に言えば五感を通した脳への刺激、そして3つ目が今回のテーマでもある「呼吸」いわば酸素供給です。
食べ物や飲み物(ブドウ糖)は最悪2、3日食べなくても生きられますが、呼吸は10分と持ちません。
私たちは1日に2万回も呼吸をしています。
脳と体に酸素を供給するという呼吸の役割が阻害されることで、脳は疲弊し、上記の要素のパフォーマンスが全て低下することを意味します。
さらに、呼吸は意識的にも、無意識的にも自律神経をコントロールできる唯一の器官です。
つまり、呼吸にはさまざまな可能性があり、運動や健康を考える上で土台となる極めて重要な活動であると考えられます。
粗悪な呼吸パターンがもたらす体への悪影響を理論的に咀嚼し、様々な側面から紐解き、ご自身の健康や綺麗な姿勢づくり、パフォーマンスアップへと繋げていきましょう。
呼吸で変化する3つの側面
生化学的側面
血中はほぼ中性を保っています。
体内では、酸素と共に二酸化酸素が適度に存在することで、細胞への酸素の供給がスムーズになります。
(ボーア効果)しかし、呼吸量や回数が多くなることで、体内の酸素は多くなり、二酸化炭素が減ります。(アルカリ性に傾く)二酸化炭素が減ることで、ヘモグロビンが酸素を手放さず、酸素が細胞に届かなくなります。
つまり、酸素を細胞に届けるには二酸化炭素が必要であり、呼吸回数を減らすことで体内の酸素、二酸化炭素のバランスが適正化されます。
なぜ呼吸数が増えるのか?
過度なストレスや、乱れた食生活により血液が酸性に傾くと、体はアルカリ性の方向へ引き戻し、中性を保とうとしたり、ストレスに対処しようと呼吸量や回数を増やします。
呼吸過多の改善による効果
①酸素供給量改善
呼吸量が減ることで、細胞内と血液内の二酸化炭素が増え、ヘモグロビンは酸素を手放しやすくなります(ボーア効果)。そのため、酸素が細胞や脳へと効率よく供給されるようになります。
②血中pHの安定
上記にあるように、呼吸回数が増えることで体はアルカリ性に傾き、pHは不安定になります。呼吸エクササイズによって、呼吸量が減り、体内の二酸化炭素が増えることで、pHが酸性方向に引き戻されます(結果中性に)。正しい呼吸を身につけることで、ストレスなどによる呼吸過多の状態から通常へとリセットすることが可能になります。
③血流改善
鼻呼吸により血管拡張作用が促進され、血流が改善されます。ゆっくりとした呼吸を繰り返すと、手先があったまるような感覚や汗をかくといった変化が現れます。逆に過呼吸のような呼吸を繰り返すと手先は冷たくなっていきます。
精神生理学的側面
人間が生きるための活動はほぼ脳によってコントロールされています。脳への栄養とは酸素やブドウ糖といった「ものとしての栄養」と、五感や経験といった「感覚的栄養」が存在します。
脳が酸素不足になって疲弊すると、体の生存を第一に考え、体の過緊張、思考の低下、精神的なストレスへの耐性低下などが起こります。
呼吸改善による効果
①精神的安定
呼吸量が減ることで、脳へのエネルギー供給が効率化され、ストレスへの耐性が向上し、脳機能が正常化されることで精神的に安定していくことが考えられます。
②攻撃性の抑制
脳に栄養が行き渡ることで、原始的な感情を抑えることができるようになります。
③集中力の向上
脳への栄養供給が効率化されることで、脳機能が正常化され、集中力が向上します。
この3つで共通するのは、呼吸量が減ることで酸素供給量が改善され、脳の機能が正常化されるということです。脳機能が正常化することで精神的にも、肉体的にも改善が見込めます。
生体力学的側面
呼吸には横隔膜の動き(上下動)が大切になります。横から見て頭、肩、骨盤が一直線上に位置する姿勢(適切な姿勢)では、呼吸による横隔膜の動きは最大化されます。姿勢の悩みとして多い反り腰や巻き肩では、横隔膜の適切な上下動がされず、肩を上げる、腰をさらに反るなどの代償動作が起きます。また、横隔膜の適切な降下によって椎体(背骨)の安定性が保たれるため、呼吸と腰痛に関係があると考えられる。
呼吸改善による効果
①姿勢の適正化
呼吸が乱れる、つまり横隔膜が機能不全になると、肋骨のポジションが外旋位となり、つられるように腰が反っていきます。呼吸が適正化されていくと肋骨のポジションが適正化され、腰周りも適切なポジションで安定させることが可能になります。
②可動域の改善
呼吸機能が低下すると横隔膜の働きが失われて、胸回り(肩甲胸郭帯)の安定性が失われているとが考えられます。そのため、呼吸が適正化されることで胸回りのポジションが適正化され可動域が増えると考えられます。
③重心のコントロール
呼吸が荒く肋骨が外旋している場合、重心は高くなります。
逆に横隔膜の動きが最大化し肋骨の内旋を作ることができると重心は下に下がります。
転びやすい方や歩き方が気になるという方は、呼吸が適正化されることで、不意な外乱に適応しやすくなると考えられます。