筋肉は自らの意思を持たず、脳からの神経指令によって収縮を起こします。
筋肉の働きを司る神経は、脳や背骨の中を通る「中枢神経」とそこから身体の末端に向かって伸びる「末梢神経」に分類されます。
人間の姿勢、動きは基本的に全てをこの「脳(中枢神経)」によって制御されており、その全容を理解しておく必要があります。そしてその伝達を担うのが末梢神経であり、この末梢神経はさらに「体性神経系」と「自律神経系」に分類されます。
イメージとしましては「中枢神経」はパソコン本体、「末梢神経」は情報を伝えるためのケーブルのような役割を持っています。
神経系の主な機能
神経は、
①皮膚や身体のさまざまな部位から情報を脳に送る役割
②送られてきた情報を分析、処理、判断、統合し、その情報に応じて適切な決定を下す司令塔の役割
③その決定を末梢に伝える役割
を担っています。
②の役割を担っているのが「中枢神経系」で、①と③の役割を担っているのが「末梢神経系」となり、私たちの体はこの2つの神経により制御されていることとなります。
中枢神経
「中枢神経」は大脳、小脳、脳幹(中脳・橋・延髄)から成り、全身から集まる情報を処理、統合する役割を担っています。
末梢神経
中枢神経と体の内外の諸器官に分布する神経とを結び、情報の伝達を行っています。
体性神経系
体性神経系は、意思によって身体を動かすために脳から筋肉などの各組織に神経指令を送ったり、身体のどこかで感じた感覚を脳に伝えるといった役割があります。
例えば、脚をあげるとき、脳からは動作に必要な筋肉に神経指令が送られ、筋繊維が収縮を起こすことで関節が動きます。この神経と筋肉の連動を「運動制御」と呼び、私たちの日常生活やスポーツ、エクササイズ時にスムーズかつ思い通りに動かしていくために必要な神経回路となります。
また、脳から直接指令を下さなくとも、体を動かす仕組みがあります。
例えば転びそうになったり、熱いものを触ったり体が危険を察知した際には、脳を介さず筋肉に指令が送られ、危険を回避するため瞬時に筋肉が収縮を起こします。
それが「反射」という身体の防衛反応として備わっている機能として考えられています。
伸長反射
「伸長反射」も筋肉に備わっている防衛反応の一種です。
筋肉には「筋紡錘」という筋肉の長さや速度を感知するセンサーがついており、筋肉が急激に引き伸ばされると、千切れてしまわぬように防衛反応として金収縮を起こし、怪我を防ごうとします。
さらに筋肉は骨や靭帯と異なり、「弾性(引き伸ばされた後に元の長さに戻ろうとする性質)」ゴムに似た性質が備わっており、この「弾性」と「伸長反射」をうまく利用できるようになることで、スポーツ動作や日常生活を効率よく動けるようになります。
例えば私たちが何気なく歩いているこの瞬間にも、この2つの「反射」が利用されています。
歩いている最中に脚を地面につく局面を「立脚期」と専門用語で言いますが、接地した脚の大臀筋やハムストリングスは引き伸ばされ、その後の伸びた筋肉が縮む作用により次の一歩を踏み出す原動力になり、反射と弾性を利用し最小限のエネルギーで効率的に動くことを可能としてくれています。
いずれも動作時に「筋肉の伸び」を感じられるほどに伸ばされているわけではございませんが、知らず知らずにこのようなメカニズムが作用しており、このメカニズムの要素を利用したトレーニングは必ずプログラムに取り入れていきたいところです。
自律神経系
自律神経系は、意思に関係なく身体の機能を調整する役割を担っており、「交感神経」と「副交感神経」に分かれています。
交感神経は身体を活発に動かす際に働き、副交感神経は身体を休める時(リラックス)に働きます。
通常では日中は交感神経、夜間は副交感神経が優位になることが知られていますが、実際は1日の中でも波を打つように互いにバランスを取っています。例えば会議などのイベントがある際は交感神経を高め、イベントが終了した際は副交感神経でリカバリーを図ります。
このように自律神経もどちらかが優位だから良いとなるのではなく、その時の状況や環境に適応できる多様性ことが重要となります。
※詳しくは自律神経のコンテンツで解説いたします。